旅館業法上の民泊について

(1)旅館業の許可


旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長。)の許可を受けなければならない。ただし、ホテル営業、旅館営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を経営しようとする場合は、この限りでない(旅館業法第3条1項)。したがって、民泊が「旅館業」の定義に当てはまる場合には、旅館業の許可が必要となる。旅館業の許可が必要な場合に無許可で営業した場合には、6ヶ月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処せられる。なお、旅館業法の行為規制については、自治体の条例等により規制もあるので、旅館業の該当性については、必ず所管の自治体の保健所に確認することが必要である。

(2)旅館業の定義 


旅館業法(昭和23年法律第138号)において、旅館業とは、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」であることとされている。

①「宿泊料」


「宿泊料」とは、名目を問わず、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされる、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃などが含まれる。旅館業は、「宿泊料を受けることが要件となっており、宿泊料徴収しない場合は、旅館業法は適用されない。ネットマッチングビジネスでは、ホストは直接的にはゲストから使用料を受け取っているわけではない。そこで、「宿泊料」を受け取っていないから、ネットマッチング民泊は旅館業にはあたらないとして、この要件を無許可業者の主張の根拠の一つとする主張がある。しかし、ネットマッチングビジネスではその実質に着目して、ホストが受け取る料金は「宿泊料」と考えられている。なお、この点で問題となるのが「広告モデル」といわれるものである。


「アフィリエイト」に似た構造で、ホストは自分のサイトやブログ、SNS等に民泊紹介事業者の広告を掲載する→宿泊者は、サイト等に登録する(無料)→宿泊者は、サイト等を閲覧して施設利用を申し込む→施設利用が確定すれば、ホストはサイト運営業者から成約報酬(広告料)を受け取る。ゲストはサイト運営業者に施設利用料を支払うという流れのモデルである。このモデルで、ホストが受け取る広告料が「宿泊料」にあたるかどうかについては、現時点では行政庁の公的な見解も裁判所の判断も出ていない。


②「宿泊」


「宿泊」とは、寝具を使用して施設(ホテル、旅館等)を利用することされている。ネット喫茶は、寝具を提供していない、宿泊料も受けていないので、「旅館業」にはあたらない。他方、「寝具を使用して」としかないので、使用する寝具をホストが提供しないで、ゲストが持参したりどこかで調達した場合でも、「宿泊」にあたるとされる。

③「人を宿泊させる営業」

③-1「営業」


「営業」とは「不特定多数の人」を対象として「継続反復」して事業としてなされる施設の提供をいう。したがって、インターネットで繰り返し不特定多数を集客して有料で部屋を貸すような場合は「営業」となる。他方、宿泊料を受け取ったとしても、友人から頼まれて泊めるような場合や、1回だけ頼まれて泊めるような場合は「営業」にあたらないから、旅館業の許可は不要ということになる。

③-2
「人を宿泊させる営業」:「宿泊」とは、寝具(ベッド、布団、毛布等)を使用して施設を利用することとされている。 

(3)アパート等の貸室業と民泊


民泊と同様に部屋を有料で貸し出す事業に不動産賃貸業がある。しかし、家賃(賃貸料)を受け取る「賃貸業」と宿泊料を受け取る「旅館業」は、その性質がまるで異なり、適用される法律も異なる。賃貸業には見解が示されていて、その基準は1ヶ月以上「住んでいる」ことである。また、厚生労働省の見解によるとアパート等の賃貸業と民泊の違いは以下2点で判断される。

①施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること。 
②施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として、営業しているものであること。 
→生活の本拠とする場合は、旅館業ではなく、不動産の賃貸業にあたる。なお、不動産賃貸業には、①国家戦略特区事業(一時的滞在)と②期間を1ヶ月以上とする賃貸マンション等(生活本拠型)がある。


(4)旅館業の種別


旅館業法上、旅館業には、①ホテル営業と②旅館営業と③簡易宿所営業と④下宿営業とがある。旅館業法及び旅館業法施行令、施行規則、条例等により種別ごとに更に細かい要件が規定されている。なお、4つの種別のうち一般の個人単位の民泊で利用されるのは、「簡易宿所営業」である。

(5)ホテル営業  


洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの。 

(6)旅館営業  


和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの。 

(7)簡易宿所営業 


宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの。具体的には、ベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステル、カプセルホテルなどがある。他の種別との兼ね合いで簡易宿所の要件として特徴的なものは次の2つの要件である。

①簡易宿所営業は、旅館業法施行令で、客室の延床面積が33平方メートル以上であること


②階層式寝台を有する場合は、上段と下段の間隔はおおむね1メートル以上であること

※ただし、平成28年4月1日施行の旅館業法施行令の改正により、「宿泊者が10人未満の場合は1人あたり3.3平方メートル」に緩和されている。

(8)下宿営業  


施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を宿泊させる営業。

→ホテル営業、旅館営業、簡易宿所の最短の営業宿泊期間は、1ヶ月未満となる。また、民泊に利用される「国家戦略特別区」は、旅館業法の適用が除外されるが、最短の宿泊営業期間は、7日から1ヶ月とされている。